2026.06.05 | 代表 猪原
美しいものほど、人は見せたくなります。アルガンオイルの色は、深い黄金色。光にかざすと、とろりと金色にゆらめきます。その色を見せたいなら、瓶は透明がいちばんです。それでも私たちは、この黄金色を、茶色いガラスの奥に隠しました。なぜ、わざわざ隠すのか。
黄金色は、生きている証
あの色は、あとから加えたものではありません。アルガニエのアルガンオイルは、搾ったままの姿で日本へ届きます。熱を加えず、よけいな工程をはさまない。だからこそ、アルガンの実が抱えていた天然の色が、そのまま瓶のなかに残っています。

搾ったままの黄金色は、天然の成分が生きているしるし。その色こそが、光に応えます。
けれど、生きているものは、光に応えてしまいます。
濃い色をたたえたオイルほど、光を受けると、少しずつ疲れていきます。とりわけ、紫外線と、青く澄んだ光。それらはオイルの内側で、香りや、なめらかさを、ゆっくりと変えていきます。実際に、アルガンオイルへ光を当てた研究でも、こうした変化が確かめられています。
欠点ではありません。自然から預かったものだからこその、繊細さです。そして本物であるほど、その繊細さは深くなります。だからこそ、守る側にも、相応の覚悟がいるのです。
なぜ、茶色い瓶なのか
光をさえぎる瓶には、いくつもの色があります。透明、青、緑、そして茶色。同じように見えて、防げる光の範囲は、色によってまるで違います。一枚の図にすると、その差は驚くほどはっきりとあらわれます。

ガラスの色ごとの、光の通しやすさ。線が低いほど、その光を遮っているしるしです。茶色いガラスだけが、オイルを傷めやすい光(紫外線から青い光まで)を、ほぼ残らず遮ります。
グラフのいちばん下を、低く這っていく線。それが、茶色いガラスです。
ここで少しだけ、光のしくみに触れさせてください。光には、色ごとに「波長」という長さがあり、波長が短いものほど、強いエネルギーを抱えています。いちばん短い紫外線、そしてそれに続く青い光。このふたつが、オイルをもっとも疲れさせます。だから、その帯をまるごと遮ってしまう茶色が、いちばん理にかなっているのです。
透明な瓶は、その光をほとんど通してしまいます。青や緑の瓶も、いちばん危うい青い光までは、防ぎきれません。茶色いアンバーのガラスだけが、その光をほぼ残らず受け止めます。薬の瓶に求められるのと同じ厳しさで、オイルにとって危うい光を止めてくれるのです。
透明な瓶のほうが、中身が見えて、美しく映るのかもしれません。届いた瞬間の華やぎでは、かないません。それでも私たちは、茶色を選びました。見せるためではなく、守るために。最後の一滴まで、搾りたてのみずみずしさを届けたいからです。
色や香り、製法まで含めた見極め方は、アルガンオイルの選び方でもお話ししています。
守るのは、瓶の色だけではありません
茶色いガラス瓶は、はじまりにすぎません。同じ「守る」という思いは、瓶を出たあとも、いくつもの場面に隠れています。
モロッコから日本まで、私たちはオイルを、船ではなく空で運びます。およそ四十八時間。時間も費用もかかりますが、熱と時間にさらされる期間を、できるかぎり短くしたいからです。
一度にたくさん仕込んで、寝かせておくこともしません。必要な分を、必要なだけ。こうして動かせるのは、モロッコの作り手と、長く信頼を重ねてきたからです。アマーズィーグ(Amazigh)の女性たちが受け継いできた手仕事から生まれたオイルが、その年のうちに、新鮮なまま、私たちのもとへ届きます。
スポイトの容器も、必要な分だけを清潔に取り出すために選びました。正直、開け閉めのたびに、わずかな空気は入ります。それを完全に防ぐつもりはありません。植物のオイルは、もともと生鮮品。長くもたせること自体を、目指していないからです。
茶色い瓶も、四十八時間の空輸も、小さなロットも、向かう先はひとつです。あの黄金色は、中身が生きている証。だから私たちは、その色を見せることよりも、色が証している新鮮さそのものを、あなたの手にとどくまで生かすことを選びました。見せるための透明ではなく、守るための茶色を。茶色い遮光性のガラスは、その約束を、いちばん静かに守ってくれます。
FAQ
Q. 茶色い瓶と透明な瓶では、何が違うのですか?
透明な瓶は、オイルを傷める紫外線や青い光を、ほとんど通してしまいます。茶色いガラスはその光をほぼ遮り、中のオイルを酸化(劣化)から守ります。最後まで搾りたての状態を保つための選択です。
Q. 青や緑の瓶では、いけないのですか?
青や緑のガラスは、オイルをいちばん傷めやすい青い光までは防ぎきれません。茶色いガラスはその光ごと遮るため、光から守る容器として適しています。
Q. 開封後は、どれくらいで使い切ればよいですか?
茶色い瓶でも、開封すると空気にふれはじめます。冷暗所で保管し、開封後は三ヶ月以内を目安に使い切っていただくのがおすすめです。