OVERVIEW
アルガンオイルには「精製」と「未精製」の2種類があります。脂肪酸は変わらないのに、抗酸化成分の残存量には大きな差が生まれる——その理由を成分データとともに解説し、自分に合った一本の選び方をお伝えします。
アルガンオイルを選ぶとき、「精製」と「未精製」の違いを意識したことはあるだろうか。同じアルガンオイルという名称でも、この一語の違いで、成分の質も、肌へのアプローチも大きく変わります。
精製アルガンオイルとは、脱臭・脱色などの工業的な処理を経て、香りや色を取り除いたオイルです。無色透明に近く、匂いもほとんどありません。扱いやすさを重視する方には馴染みやすい一本でしょう。
一方、未精製アルガンオイルは、搾油後にそのままの状態を保ったもの。黄金色の液体には、アルガンの実がもつ栄養がそのまま生きています。
精製と未精製、何が違うのか
精製は脱臭・脱色で「使いやすさ」を優先し、未精製は栄養成分をそのまま残す製法です。
精製アルガンオイルとは、高温処理や化学的な精製工程を経て、オイル中の微量成分を除去したものです。色は薄く、香りもほとんど感じられません。保存安定性が高く、化粧品原料として広く使われています。
未精製アルガンオイルとは、コールドプレス(低温圧搾)製法で搾ったオイルをろ過のみで仕上げたものです。アルガニアスピノサ核油に含まれるトコフェロール、ポリフェノール、カロテノイドが自然のまま残っています。
ナッツを思わせる穏やかな香り。光を受けると琥珀のように輝く黄金色。これらはすべて、精製工程で取り除かれてしまう要素なのだ。
コールドプレスとエキスパラープレス:搾り方の違いも知っておく
未精製オイルの中にも、搾り方の違いがあることはあまり知られていません。
コールドプレス(低温圧搾)は、熱も化学薬品も使わずに実を圧搾する方法です。トコフェロール、ポリフェノール、必須脂肪酸のバランスが最大限に保たれます。収率は低いぶん、オイルの質に対する誠実さがそのまま現れる製法だといえるでしょう。
一方、エキスパラープレスは機械的な圧搾力が高く、摩擦熱が発生します。収率は上がりますが、抗酸化成分が若干減少するとされています。化粧品原料としては広く用いられている製法です。
ARGANIEがコールドプレスを選ぶのは、感覚的な判断ではありません。植物が長い年月をかけて蓄えた成分を、そのまま届けるための必然なのだ。
精製で失われるもの
高温精製によってトコフェロールが大幅に減少するという研究があります。失われるのは数値だけではありません。
Belcadi-Haloui らが発表した研究(2018年)では、175°Cでのロースト処理によりアルガンオイルのトコフェロール含有量が977.9mg/kgから305.2mg/kgへと、約69%減少したと報告されています(PMID: 29977905)。この研究はロースト処理を対象としたものですが、精製工程の脱臭処理でも高温の蒸気にさらされるため、トコフェロールの損失は同様に起こりうると考えられています。
なぜこれほどの差が生まれるのか。脱臭工程で高温にさらされることで、熱に弱いトコフェロールが分解されるためです。加えて、カロテノイドやポリフェノールといった微量成分も同時に除去されます。
γ-トコフェロールという、あまり語られない主役
ここで一つ、問いを立てたい。アルガンオイルのビタミンEとはどんな形をしているのか、考えたことはあるだろうか。
ビタミンEには複数の形態があります。最もよく知られるのはα-トコフェロールですが、アルガンオイルの場合、ビタミンEの大部分はγ(ガンマ)-トコフェロールが占めています。Frontiers in Nutrition誌(2021年)の報告によれば、アルガンオイルのトコフェロールの約81〜92%がγ-トコフェロールであり、α-トコフェロールはわずか2.4〜6.5%に過ぎないとされています(PMC8850956)。
γ-トコフェロールはα-とは異なる抗酸化経路を持ち、酸化ストレスに対して独自のはたらきをすると考えられています。このバランス自体がアルガンオイルの特質であり、精製工程によってこのバランスが崩れることは、単なる「量の減少」以上の意味を持つのではないかと私たちは見ています。
精製によって得られるのは、安定性と無臭という「使いやすさ」です。失われるのは、植物が何千年もかけて蓄えてきた微量栄養素の、複雑なバランスです。
成分比較表で見る精製と未精製
脂肪酸組成は大きく変わらないものの、抗酸化成分・植物固有成分に決定的な差が生まれます。
| 成分 | 未精製 | 精製 |
|---|---|---|
| オレイン酸 | 43〜49% | 43〜49% |
| リノール酸 | 29〜37% | 29〜37% |
| トコフェロール(ビタミンE) | 約600〜900mg/kg(うちγ型が大部分を占める) | 大幅に減少(高温処理で約69%減との報告あり) |
| ポリフェノール(総量) | 約3,263 µg/kg(フェルラ酸3,147 µg/kg が主体) | 大幅に減少 |
| フィトステロール(アルガン固有) | スコテノール・スピナステロールが全ステロール画分の約88%を占める | 精製工程で変性のリスクあり |
| カロテノイド | 残存(黄金色の由来) | 除去(無色透明に近い) |
| 色 | 黄金色 | 薄い黄色〜無色 |
| 香り | ナッツの穏やかな香り | ほぼ無臭 |
| 保存安定性 | 開封後3ヶ月以内を推奨 | 比較的長い |
注目すべきは、オレイン酸やリノール酸といった主要脂肪酸の割合は、精製・未精製でほとんど変わらないという点です。変わるのは、トコフェロールやポリフェノール、フィトステロールといった「微量だが重要な成分」の残存量。
特にスコテノールとスピナステロールは、アルガンオイルに固有のフィトステロールです。他のオイルにはほとんど含まれない、アルガンオイルらしさの根拠の一つといえるでしょう。脂肪酸が骨格だとすれば、これらの微量成分は、そこに宿る植物の記憶のようなものなのではないか。
未精製アルガンオイルの見分け方
色・香り・容器の3点を確認すれば、手に取る前でもある程度の判断ができます。
未精製のアルガンオイルには、いくつかの分かりやすい特徴があります。
まず、色。光に透かすと、はちみつのような黄金色をしているはずです。無色透明に近いものは精製されている可能性が高いでしょう。
次に、香り。栓を開けたとき、ローストしたナッツを思わせる穏やかな香りがあれば、それは精製されていない証拠です。何も感じなければ、脱臭処理が施されていると考えてよいのではないか。
そして容器。未精製オイルは光や熱に敏感なため、褐色ガラス瓶に入っていることが品質管理の基本となります。透明なプラスチック容器に入ったものは、保存環境として十分とはいえません。
成分表示も手がかりになります。「アルガニアスピノサ核油」が唯一の成分として記載されていれば、純粋な未精製オイルである可能性が高い。添加物や他のオイルが混合されている場合は、成分表にその旨が記載されています。
精製・未精製、あなたに合うのはどちらか
保湿だけでよいなら精製でも十分。植物の力を丸ごと受け取りたいなら、未精製を。
精製アルガンオイルが向いているのは、香りのないオイルを好む方、初めてオイル美容を試す方、あるいは他の化粧品に混ぜて使いたい方です。手軽さという点では確かに優れています。
しかし、アルガンオイル本来の力を知りたいのであれば、未精製を選ぶ理由があります。γ-トコフェロール、ポリフェノール、アルガン固有のフィトステロールが自然のバランスのまま残った一本は、ただの「保湿オイル」ではない。モロッコの大地が育んだ、植物の叡智そのものです。
ARGANIEのアルガンオイルは、その年に収穫した実のみを使い、コールドプレス製法で搾油しています。搾りたてのオイルは48時間以内に空輸され、褐色ガラス瓶に詰められる。この一連の流れは、未精製オイルの栄養を届けるための必然的な設計なのだ。
洗顔後、化粧水の前にスポイト1回分。ブースターとして取り入れることで、その後のスキンケアがより心地よく肌に届きます。指先に広がる黄金色のオイルとナッツの香りは、毎朝のスキンケアに静かな豊かさを添えてくれるでしょう。
よくある質問
Q. 未精製アルガンオイルは敏感肌でも使えますか?
A. 未精製アルガンオイルの主成分であるオレイン酸とリノール酸は、人の皮脂に近い脂肪酸組成を持っています。ただし初めて使う場合は、腕の内側など目立たない部分でパッチテストを行ってからお使いください。香りや色が気になる場合は、少量から始めるのがおすすめです。
Q. 精製と未精製で保存方法は違いますか?
A. 未精製オイルはトコフェロールやポリフェノールが残っている分、光や熱の影響を受けやすい特徴があります。直射日光を避け、常温の暗所で保管してください。開封後は3ヶ月以内の使用を推奨しています。褐色ガラス瓶は紫外線からオイルを守るための設計です。
Q. 未精製オイルのナッツの香りは強いですか?
A. 高品質な未精製アルガンオイルの香りは穏やかで、ローストナッツを思わせる自然な風味です。肌になじませると数分で香りはほとんど感じなくなります。強い不快な臭いがする場合は、酸化や品質に問題がある可能性があるため注意が必要です。
Q. 精製オイルの方が安いのはなぜですか?
A. 精製工程により品質のばらつきを均一化できるため、大量生産に向いています。原料の等級を問わず加工できることも、コストを抑えられる理由の一つです。未精製オイルは原料の品質がそのまま最終製品に反映されるため、厳格な原料選定と品質管理が求められます。