OVERVIEW
アルガンオイルには「精製」と「未精製」の2種類があります。脂肪酸は変わらないのに、抗酸化成分の残存量には大きな差が生まれる。その理由を成分データとともに解説し、自分に合った一本の選び方をお伝えします。
アルガンオイルの「精製」と「未精製」。違いは、オイルから何を取り除き、何を残すかにあります。
精製アルガンオイルとは、脱臭・脱色などの工業的な処理を経て、香りや色を取り除いたオイルです。無色透明に近く、匂いもほとんどありません。扱いやすさを重視する用途に適しています。
一方、未精製アルガンオイルは、搾油後にそのままの状態を保ったもの。黄金色の液体には、アルガンの実がもつ栄養がそのまま生きています。
01精製と未精製、何が違うのか
精製は脱臭・脱色で「使いやすさ」を優先し、未精製は栄養成分をそのまま残す製法です。
精製アルガンオイルとは、高温処理や化学的な精製工程を経て、オイル中の微量成分を除去したものです。色は薄く、香りもほとんど感じられません。均一な品質に仕上げやすく、化粧品原料として広く使われています。
未精製アルガンオイルとは、コールドプレス(低温圧搾)製法で搾ったオイルをろ過のみで仕上げたものです。アルガニアスピノサ核油に含まれるビタミンE(トコフェロール)、ポリフェノール、カロテノイドが自然のまま残っています。
ナッツを思わせる穏やかな香り。光を受けると琥珀のように輝く黄金色。これらはいずれも、精製工程で取り除かれる要素です。

02精製で失われるもの
高温にさらされると、トコフェロールは大きく減少します。同時に、色や香りをつくる微量成分も取り除かれます。
ある研究では、175°Cでのロースト処理によりアルガンオイルのビタミンE(トコフェロール)の量が977.9mg/kgから305.2mg/kgへと、約69%減少したと報告されています。この研究はロースト処理を対象としたものですが、精製工程の脱臭処理でも高温の蒸気にさらされるため、トコフェロールの損失は同様に起こりうると考えられています。
この差は、脱臭工程の高温によって、熱に弱いトコフェロールが分解されることで生まれます。カロテノイドやポリフェノールといった微量成分も、同じ工程で除去されます。
γ-トコフェロールという、あまり語られない主役
ビタミンEには複数の形態があります。最もよく知られるのはα-トコフェロールですが、アルガンオイルの場合、ビタミンEの大部分はγ(ガンマ)-トコフェロールが占めています。ある報告によれば、アルガンオイルのトコフェロールの約81〜92%がγ-トコフェロールであり、α-トコフェロールはわずか2.4〜6.5%に過ぎないとされています。
γ-トコフェロールはα-とは異なる抗酸化経路を持ち、酸化ストレスに対して独自のはたらきをすると考えられています。このバランス自体がアルガンオイルの特質であり、精製工程によってこのバランスが崩れることは、単なる「量の減少」以上の意味を持つと、私たちは考えています。
03成分比較表で見る精製と未精製
脂肪酸組成は大きく変わらないものの、抗酸化成分・植物固有成分に決定的な差が生まれます。
| 成分 | 未精製 | 精製 |
|---|---|---|
| オレイン酸 | 43〜49% | 43〜49% |
| リノール酸 | 29〜37% | 29〜37% |
| トコフェロール(ビタミンE) | 約600〜900mg/kg(うちγ型が大部分を占める) | 大幅に減少(高温処理で約69%減との報告あり) |
| ポリフェノール(総量) | 約3,263 µg/kg(フェルラ酸3,147 µg/kg が主体) | 大幅に減少 |
| フィトステロール(アルガン固有) | スコテノール・スピナステロールが全ステロール画分の約88%を占める | 精製工程で変性のリスクあり |
| カロテノイド | 残存(黄金色の由来) | 除去(無色透明に近い) |
| 色 | 黄金色 | 薄い黄色〜無色 |
| 香り | ナッツの穏やかな香り | ほぼ無臭 |
| 保存安定性 | 抗酸化成分が残るため、精製より酸化しにくい(開封後6ヶ月以内を推奨) | 抗酸化成分が減るため、未精製より酸化しやすい |
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オレイン酸やリノール酸といった主要脂肪酸の割合は、精製・未精製でほとんど変わりません。変わるのは、トコフェロールやポリフェノール、フィトステロールといった微量成分の残存量です。
特にスコテノールとスピナステロールは、アルガンオイルだけがもつ固有の植物成分(フィトステロール)です。他のオイルにはほとんど含まれず、アルガンオイルを特徴づける成分の一つです。

04未精製アルガンオイルの見分け方
色・香り・容器の3点を確認すれば、手に取る前でもある程度の判断ができます。
未精製のアルガンオイルには、いくつかの分かりやすい特徴があります。
まず、色。光に透かすと、はちみつのような黄金色をしています。無色透明に近いものは、精製されている可能性があります。
次に、香り。手のひらで温めると、ローストしたナッツを思わせる穏やかな香りが立ちのぼります。冷たいままではほとんど香りません。温めても香りを感じない場合は、脱臭処理が施されていると考えられます。
そして容器。未精製オイルは光や熱に敏感なため、褐色ガラス瓶に入っていることが品質管理の基本となります。光が届く透明な容器では、短い期間でも酸化が進みます。また、ガラスはオイルと反応しにくく、成分や香りを変えにくい素材です。
成分表示も手がかりになります。「アルガニアスピノサ核油」が唯一の成分として記載されていれば、純粋な未精製オイルである可能性が高い。添加物や他のオイルが混合されている場合は、成分表にその旨が記載されています。
05精製と未精製、どちらを選ぶか
精製は、香りや色を抑え、扱いやすさを高める方法。未精製は、アルガンの実がもつ色や香り、微量成分を残す方法です。
精製アルガンオイルは、香りのないオイルを好む場合や、他の化粧品に混ぜて使う場合に向いています。扱いやすさに優れた選択肢です。
どちらを選ぶかは、オイルに何を求めるかで変わります。
アルガニエが選んだのは、未精製です。
アルガニエのアルガンオイルは、その年に収穫した実のみを使い、コールドプレス製法で搾油しています。
FAQよくある質問
Q.精製と未精製で保存方法は違いますか?+
未精製オイルは、トコフェロールなどの抗酸化成分が残っているため、精製オイルより酸化しにくいことが報告されています。ただし光と熱には弱いため、直射日光を避け、常温の暗所で保管してください。開封後は6ヶ月以内の使用を推奨しています。褐色ガラス瓶は紫外線からオイルを守るための設計です。
Q.未精製オイルのナッツの香りは強いですか?+
高品質な未精製アルガンオイルの香りは穏やかで、ローストナッツを思わせる自然な風味です。肌になじませると数分で香りはほとんど感じなくなります。強い不快な臭いがする場合は、酸化や品質に問題がある可能性があるため注意が必要です。
Q.去年と香りが少し違う気がします。品質が変わったのでしょうか?+
ご心配は要りません。未精製アルガンオイルは天然のオイルのため、その年の収穫や気候によって、含まれる成分の比率がわずかに変わることが知られています。そのため、香りの感じ方にもわずかな違いが出ることがあります。もう一つ、開封後は空気に触れるため、時間が経つことでも香りの印象は少しずつ変わっていきます。目安として、気になるときは開けたての状態同士で比べてみてください。開けたて同士のわずかな違いであれば、その年の実の個性による自然なものです。いずれも穏やかな香りの範囲であれば、品質の変化ではありません。どうぞ安心してお使いください。もし刺激のあるとがった香りに変わっていた場合だけ、開封後は早めに使い切り、直射日光を避けた常温の暗所で保管するサインとお考えください。
REFERENCES
- Belcadi-Haloui R, et al. (2018)「Effects of Roasting Temperature and Time on the Chemical Composition of Argan Oil」 View paper (International Journal of Food Science)
- Gharby S, Charrouf Z. (2022)「Argan Oil: Chemical Composition, Extraction Process, and Quality Control」 View paper (Frontiers in Nutrition)
- Asbbane A, et al. (2024)「Effects of physical refining process on quality and stability of argan oil (Argania spinosa (L.) Skeels)」 View paper (Scientific Reports)