
OVERVIEW
ブースターオイルとは、洗顔直後・化粧水の前に使う導入用オイルのことです。アルガンオイルのオレイン酸43〜49%・リノール酸29〜37%という脂肪酸バランスがブースターに向く理由と、5ステップの使い方をお伝えします。(出典: Frontiers in Nutrition, 2021)
ARGANIE 代表 猪原
CONTENTS
化粧水より先に、アルガンオイルを塗る。
そう決めたのは、化粧水を先に使うスキンケアに何かが足りないと感じていたからです。乾燥した日の角質は、水を乗せてもなじまない。そのもどかしさを解消したのが、洗顔後すぐにオイルを置くという習慣でした。逆に思えるかもしれません。でも、その一滴が変えるものを一度知ると、順番を戻す気にはなれないのです。
ブースターオイルとは何か
洗顔後すぐに使い、角質をやわらかくして化粧水のなじみを整える導入用オイルです。
ブースターオイルの定義はシンプルです。洗顔後・化粧水の前に使う導入オイル。英語の「booster(促進するもの)」が語源で、スキンケアの入口を整えるためのひとてまです。
角質層が乾燥でかたくなると、化粧水を塗っても肌表面にとどまりやすくなります。ブースターオイルは油性の脂肪酸で角質をやわらかくし、水分の通り道を準備する。そのためのひとてまです。
「オイルを先に使うと化粧水を弾くのでは」。私もかつてそう思っていました。ところが適量のオイルは角質層に届いて柔軟化に使われるため、肌表面に厚い油膜をつくりにくい性質があります。むしろ化粧水が入りやすい状態を準備してくれる。逆説のようですが、これが私がこの習慣を選んだ理由のひとつです。

洗顔直後にオイルを使う、皮膚科学の視点
皮脂膜が洗い流された直後は、オレイン酸が角質細胞間脂質にはたらきかけやすいタイミングです。
洗顔後の肌は、清潔であると同時に、天然の皮脂膜が洗い流された状態にあります。このタイミングにオイルを届けることの意味を、私は皮膚科学の文献を読んで確かめました。
私が文献にあたって確かめたのは、こういうことです。オレイン酸のような不飽和脂肪酸は、角質細胞間の脂質二重層に取り込まれ、炭化水素鎖に「乱れ」を生じさせる(PubMed: Bilayer structure and lipid dynamics in a model stratum corneum with oleic acid, 2011)。この乱れが経皮浸透のチャネルを開く。だから私は洗顔直後にこだわります。皮脂膜が薄くなっているこのタイミングが、その作用が最も届きやすい状態だからです。
もうひとつ、私が大切にしているのが洗顔後に残る水気です。タオルで押さえるのは「軽く吸い取る」程度に。完全に拭き取らないことで、水分とオイルが同時に角質層へ届きます。その効率の差を、肌で感じてきました。
アルガンオイルがブースターに向く理由
コールドプレスで搾られた新鮮な脂肪酸。産地・製法・速度が、ブースター適性の根拠です。
すべてのオイルがブースターに向くわけではありません。角質層にはたらきかける浸透性と、肌本来のうるおいを支える保護力を両立していることが条件です。そしてその条件を満たすかどうかは、数値だけでなく、産地と製法に深く関わっています。
私がこのオイルを選ぶ理由は、数値に根拠があります。Frontiers in Nutrition(2021)の組成分析を確かめたとき、アルガンオイルのオレイン酸(43〜49%)とリノール酸(29〜37%)が全体の約80%を占めていることに、私は納得しました。オレイン酸は人の皮脂に近い構造を持ち、角質層への浸透性に優れる。リノール酸は、角質のバリア機能を構成するセラミドの原料となる脂肪酸です。この二つが酸化していない状態で届くことが、私がアルガンオイルをブースターとして使い続ける根拠です。
ただし、同じアルガンオイルでも機能するものとそうでないものがある。その分かれ目は鮮度と製法だと、私は考えています。
モロッコ南西部のソウス・マッサ地域。ユネスコ生物圏保護区に指定されたこの土地で、アマーズィーグ(Amazigh)の女性たちの手仕事によってアルガンの実は何世代にもわたり収穫されてきました。その年のオイルを、長く信頼を重ねた関係を通じて選び取ること。それが私たちの調達の根本にある姿勢です。
コールドプレス(低温圧搾)で搾るのは、熱を加えると脂肪酸の構造が変性するからです。温度を上げないまま搾ることで、オレイン酸とリノール酸が酸化しないまま保たれます。収穫から48時間以内に空輸するのも、この理由からです。時間が経つほどオイルは酸化に近づく。その速度を最小限に保つために、産地と日本の間を最短距離でつなぎます。
科学的な数値の背景にある製法と速度。その両方を選び取ることが、私たちがARGANIEを続ける根拠のひとつです。
| オイルの種類 | 主要脂肪酸 | ブースター適性 |
|---|---|---|
| アルガンオイル | オレイン酸43〜49%、リノール酸29〜37% | 浸透性と保護力のバランスに優れる |
| ホホバオイル | ワックスエステル主体 | 表面保護が中心。浸透性はやや穏やか |
| ローズヒップオイル | リノール酸45〜55%、α-リノレン酸15〜25% | 浸透性は高いが酸化しやすい |
| スクワランオイル | 炭化水素(スクワラン) | 軽い使用感。角質柔軟作用は穏やか |

ブースターオイルの使い方 5ステップ
洗顔後、水気が残った肌にオイル3〜4滴。30秒待ってから化粧水を重ねます。
私自身が毎日続けている順番を、そのままお伝えします。
ステップ1 | 洗顔する
いつもの洗顔料で顔を洗い、ぬるま湯でていねいにすすぎます。タオルは軽く押さえる程度に。完全に拭き取らず、ほんのり水気を残してください。
ステップ2 | アルガンオイルを3〜4滴、手のひらに取る
アルガンオイルをスポイトで3〜4滴。手のひらで軽く温めると、肌なじみがさらに心地よくなります。
ステップ3 | 顔全体にハンドプレスする
両手で顔を包み込むように、やさしく押さえます。こすらず、押し込むイメージで。目の周りや小鼻の脇も、忘れずに。
ステップ4 | 30秒ほど待つ
表面のべたつきがおちついて、しっとりした感触だけが残る瞬間があります。私はここに、オイルが角質層に届いた感触を感じます。
ステップ5 | 化粧水、美容液、乳液またはクリームを重ねる
ここからは通常のスキンケアです。化粧水、美容液、乳液やクリームの順で重ねてください。夜はスポイト1回分をたっぷり使った、じっくりとしたケアもおすすめです。
モロッコでは古くから、オイルとフローラルウォーターを交互に重ねる美容の習慣が伝わっています。ブースターオイルという考え方は、その伝承と根を同じくするものかもしれません。
導入美容液との違いと選び方
導入美容液は水溶性成分、ブースターオイルは油性の脂肪酸。乾燥やごわつきが気になるときはオイルが向きます。
「導入美容液」と「ブースターオイル」はしばしば混同されます。ただ、アプローチは異なります。導入美容液は水溶性の美容成分で角質をやわらかくし、ブースターオイルは油性の脂肪酸で細胞間脂質にはたらきかけます。
乾燥やごわつきを感じやすい方には、ブースターオイルが向いているでしょう。もともと皮脂が多めで、さっぱりとした使用感を好む方には導入美容液という選択肢もあります。どちらが正解ではなく、今の自分の肌の状態を観察して選ぶこと。それが、私がスキンケアで大切にしていることです。
季節や体調によって肌が求めるものは変わります。アルガンオイルの選び方については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. ブースターオイルは朝も使えますか?
A. 朝も使用できます。3〜4滴と少なめにし、ハンドプレスで薄くなじませてください。30秒ほど待てば、メイクの邪魔になることはほとんどありません。
Q. オイルの後に化粧水が弾かれませんか?
A. 3〜4滴の適量であれば弾かれません。アルガンオイルのオレイン酸は角質層にはたらきかけるため、肌表面に厚い油膜を残しにくい性質があります。30秒ほど待ってから重ねるのがポイントです。
Q. 脂性肌でもブースターオイルは使えますか?
A. 取り入れていただけます。量は2〜3滴に抑え、肌の様子を見ながら調整してください。うるおいのバランスが整ってくると、皮脂のリズムが落ち着いてくる方もいらっしゃいます。
Q. アルガンオイルの開封後の使用期限は?
A. 開封後は3ヶ月以内の使用をおすすめしています。酸化を防ぐため、直射日光を避けた涼しい場所で保管してください。
Q. アルガンオイルの産地はどこですか?
A. モロッコ南西部のソウス・マッサ地域で収穫されたアルガンの実を使用しています。ユネスコ生物圏保護区に指定されたこの土地で、アマーズィーグ(Amazigh)の人々が手作業で採取した種をコールドプレスで搾油しています。詳しくはモロッコのページをご覧ください。
まとめ
水より先に、オイルを塗る。私がそう決めているのは、コールドプレスで搾られ48時間以内に届く新鮮な脂肪酸への信頼からです。オレイン酸が角質をひらき、リノール酸がバリアの原料を補う。この二つが酸化していない状態で届くからこそ、ブースターとして機能するのです。洗顔後の水気が残った肌に3〜4滴、30秒。「なぜアルガンオイルが先か」への答えは、この一滴の中にあります。