ローズウォーターは、ダマスクローズの花びらを水蒸気蒸留してつくられる芳香蒸留水です。その起源は古代ペルシャ(現在のイラン)にさかのぼり、宗教儀式や医療、美容に使われてきた長い歴史があります。シルクロードを通じて中東からヨーロッパへ、そしてモロッコへと伝わったダマスクローズは、今もなお「バラの女王」と呼ばれ、世界のスキンケアを支え続けています。
ダマスクローズの起源と栽培の始まり
ダマスクローズ(学名:Rosa × damascena)の栽培は、紀元前12世紀ごろのペルシャ(現在のイラン南西部・シーラーズ周辺)で始まったとされています。ゾロアスター教徒たちが、宗教的な儀式のためにバラを栽培し、その花を水に浸してローズウォーターをつくっていたと伝えられます。
「ダマスクローズ」という名称は、シリアの古都ダマスカスに由来するという説が広く知られています。ただし、名称の由来については「ダマスク織」(繊細な紋織物)に由来するとする研究者もおり、定説には至っていません。
ダマスクローズの植物学的な起源については諸説ありますが、ロサ・ガリカとロサ・フェニキアなど複数の原種が交配して生まれた雑種であると一般的に考えられています。繰り返し咲く性質(リモンタント性)は、中央アジアや東アジアに分布する原種の遺伝的影響によるものとされています。
10世紀のペルシャ人医師・イブン・シーナ(980〜1037)は、コイル状の冷却管を組み込んだ水蒸気蒸留器を確立し、ローズウォーターと精油を安定して抽出できる技術を開発しました。現代に至るまで、この蒸留法が芳香蒸留水の生産の基本となっています。
シルクロードを通じた伝播
ペルシャで生まれたダマスクローズとローズウォーターの文化は、シルクロードの交易路を通じて西方へと広がっていきました。シルクロードは中央アジア、ペルシャ、トルコ、中東を経由し、最終的にローマへとつながる東西の大動脈です。絹や香辛料と同様に、バラの栽培技術とローズウォーターの製造知識もこの道を通って各地に伝わりました。
シルクロードの主な中継点
| 地域 | 役割 |
|---|---|
| ペルシャ(現在のイラン) | 栽培と蒸留技術の発祥地。宗教儀式・医療・美容に広く活用。 |
| シリア・ダマスカス | 交易の重要な中継地。バラとローズウォーターの流通拠点のひとつ。 |
| トルコ・小アジア | 十字軍遠征の時代に西ヨーロッパへの伝播を担う中間地点に。 |
十字軍とヨーロッパへの普及
13世紀の十字軍遠征が、ダマスクローズをヨーロッパに広めるひとつの契機となったといわれています。フランスの十字軍騎士がダマスカスからバラを持ち帰り、ヨーロッパ各地で栽培が始まったとされています。その後ブルガリアでは17世紀以降に本格的な栽培が始まり、バルカン山脈とスレドナ・ゴラ山脈に挟まれたカザンラク地方が「バラの谷」として世界的に知られるようになりました。
ブルガリアとモロッコにおける栽培
現代のダマスクローズ産地として名が挙がるのは、ブルガリアとモロッコです。モロッコには、フランスの香料産業の影響でダマスクローズが持ち込まれたとされています。現在の主要産地はモロッコ南部のケラート・ムグナ(Kelaat M'Gouna)周辺で、毎年5月に「バラ祭り」が開催されます。この地の昼夜の寒暖差と乾燥した山岳気候が、凛とした香りを持つ花びらを育てています。
アルガニエのダマスクローズは、このケラート・ムグナに産地をもつダマスクローズを、収穫直後に伝統的な水蒸気蒸留でつくった芳香蒸留水です。花びらそのものの香りをできるだけそのまま届けるため、添加物を加えない製法を選んでいます。
まとめ
ダマスクローズとローズウォーターは、古代ペルシャで始まった栽培と蒸留の文化がシルクロードを通じて広がり、今日の世界的なスキンケア素材へと育ってきたものです。イブン・シーナが10世紀に確立した水蒸気蒸留技術は、1000年以上を経た今もその基本が変わっていません。モロッコ・ケラート・ムグナのダマスクローズは、その長い歴史の末端に位置する産地のひとつです。
よくある質問
Q. ローズウォーター(芳香蒸留水)はどうやってつくられますか?
A. ダマスクローズの花びらを大釜に入れて水蒸気で蒸し、発生した蒸気を冷却して集めたものがローズウォーター(芳香蒸留水)です。この水蒸気蒸留法は10世紀のペルシャ人医師イブン・シーナが確立した技術をもとにしており、今日の生産でも基本的な工程は変わっていません。ローズオイル(精油)が分離した後の水分がローズウォーターとして使われます。
Q. ダマスクローズはどこが起源ですか?
A. 諸説ありますが、紀元前12世紀ごろの古代ペルシャ(現在のイラン南西部・シーラーズ周辺)で最初に栽培が始まったとされています。宗教儀式のためにバラを育てていたゾロアスター教徒が起源とも言われます。その後シルクロードを通じて中東・ヨーロッパへ、さらにモロッコへと伝わっていきました。名称の由来はシリアの古都ダマスカスとする説が知られています。
Q. アルガニエのローズウォーターはどの産地のものですか?
A. モロッコ南部のケラート・ムグナ(Kelaat M'Gouna)産のダマスクローズを使用しています。ケラート・ムグナはアトラス山脈の麓に位置し、昼夜の寒暖差と乾燥した気候が香り豊かなバラを育てます。毎年5月に「バラ祭り」が開催される場所でもあります。収穫直後に水蒸気蒸留した芳香蒸留水を、添加物なしでお届けしています。
Q. ローズウォーターのスキンケアでの使い方を教えてください。
A. 洗顔後、アルガンオイルでブースターケアをした後にローズウォーターを化粧水として使うのがアルガニエの推奨する順番です(洗顔→アルガンオイル→ローズウォーター→美容液→乳液/クリーム)。手のひらに適量とって顔全体になじませてください。肌の状態によって合う・合わないがありますので、初めて使う際はパッチテストをお勧めします。