
OVERVIEW
年間降水量わずか200mmのモロッコ南西部で、アルガンの木が実に豊かなオイルを蓄える理由を、植物の生存戦略から読み解きます。地下深くへ伸びる根、アマジグの人々の暮らしとの関わり、そして現代のスキンケアへつながる物語です。
目次
- 年間降水量200mm——アルガンが生きる大地
- 地下8mへ伸びる根——水を求める生存戦略
- なぜアルガンの実は、これほどオイルを蓄えるのか
- アマジグの人々とアルガンの木——余すことなく使う暮らし
- サハラの日差しが生んだ美容文化
- 科学が裏づけるアルガンオイルの力
- よくある質問
- まとめ
アルガンオイルと聞くと、美容オイルとしての効果をまず思い浮かべる方が多いかもしれません。けれどその一滴には、雨のほとんど降らない大地で何千万年も生き延びてきた、一本の木の物語が宿っています。なぜアルガンの木は、あれほど豊かなオイルを実に蓄えるのか。根の深さ、種子の知恵、そしてそれを受け継いできた人々の暮らしをたどります。
年間降水量200mm——アルガンが生きる大地
アルガンの木が育つモロッコ南西部は、年間降水量がわずか200mm前後の半砂漠地帯。夏の気温は40℃を超えることも珍しくありません。
この過酷な環境に、約2,000万本ともいわれるアルガンの木が広がっています。ユネスコは1998年にこの森を生物圏保護区に指定しました。サハラ砂漠の北進を食い止める「緑の防壁」として、アルガンの森は大地そのものを守っています。
しかし、過去100年でその面積はおよそ半分に縮小しました。過放牧や都市化がおもな原因です。かつて北アフリカ全域に分布していたアルガンの木は、現在モロッコ南西部スース谷を中心としたわずか約8,280km²の地域にしか残っていません。
地下8mへ伸びる根——水を求める生存戦略
アルガンの木が乾燥に耐える仕組みは、地上からは見えない根に隠されています。
アルガンの根系は「二形性」と呼ばれる構造を持っています。垂直に深く伸びる主根(直根)と、水平方向に広がる側根の二層構造です。主根は地下約8mまで到達し、乾季には深い地層に残るわずかな水分を吸い上げます。一方、側根は雨季に地表近くの水分と養分を効率よく取り込みます。季節に応じて水源を切り替える、柔軟な生存戦略です。
Ain-Lhoutらの研究グループが電気抵抗率測定を用いた調査(2016年)では、アルガンの木が地下3〜6mの風化層から水を吸収していることが確認されました。乾季になるほど、より深い土壌から水を取る傾向が強まります。
そしてもう一つ、アルガンの木には「休眠」という切り札があります。極度の乾燥が続くと、葉や花、実を自ら落とし、生命活動を最小限に抑えて耐え忍ぶのです。雨が戻ればふたたび芽吹く。6,500万年前から生き延びてきたとされるこの木は、気の長い生存戦略を身につけています。
なぜアルガンの実は、これほどオイルを蓄えるのか
種子がオイルを蓄えること自体は、植物の世界では珍しくありません。大豆もゴマもヒマワリも、種子に脂質を蓄えて発芽のエネルギーにしています。
ただし、アルガンの種子は際立っています。含油率は重量の約50%。大豆(約20%)やオリーブの果実(15〜30%)と比べても、格段に高い数値です。ビタミンEの含有量はオリーブオイルの約2〜3倍。主成分のオレイン酸(約45%)とリノール酸(約35%)は、いずれも酸化から種子を守る働きを担っています。
なぜ、これほどまでに濃密なのか。その理由は、アルガンが置かれた環境の厳しさにあると考えられています。年間降水量200mm、夏には40℃を超える気温。種子が発芽してから根を地下深くまで伸ばし、水脈にたどり着くまでの時間は、命に直結します。オイルは水分の蒸発を防ぐ天然のバリアであり、発芽初期のエネルギー源でもあります。過酷な環境で確実に次世代を残すために、アルガンは他の植物よりも多くの栄養をひとつの種子に凝縮したのです。
つまり、アルガンオイルの栄養価の高さは、美容のために設計されたものではありません。何千万年もかけて環境に適応してきた、生存の知恵の結晶です。
アマジグの人々とアルガンの木——余すことなく使う暮らし
モロッコの先住民であるアマジグ(Amazigh)の人々にとって、アルガンの木は暮らしそのものでした。
実からはオイルを搾り、食用にも肌の手入れにも使います。枝は家の屋根の材料になり、葉はヤギの飼料として与えられました。オイルを搾ったあとの搾りかすも天日干しにして家畜の餌に。木材は燃料や建材としても重宝されました。一本の木のすべてが、砂漠のほとりの暮らしを支えていたのです。
2014年、ユネスコはアルガンにまつわる伝統的な知識と技術を無形文化遺産に登録しています。アマジグの言葉(タシュルヒート語)には、アルガンの実の熟し具合や加工工程を表す豊富な語彙が残されています。一本の木と人の関わりの深さが、言葉そのものに刻まれているのです。
現在、アルガンオイルの生産はおもに女性たちの協同組合によって担われています。手作業による伝統的な製法が、品質と雇用の両方を守り続けています。ARGANIEのピュアアルガンオイルも、こうした手仕事の伝統を受け継いだコールドプレス製法で搾られたものです。
サハラの日差しが生んだ美容文化
モロッコの美容文化は、砂漠の強烈な日差しから肌を守る必要性の中から生まれました。
ハマム(蒸気浴)で毛穴を開き、サボンノワール(黒石鹸)で肌の表面を整え、ガスール(粘土)で汚れを吸着させる。仕上げにアルガンオイルで全身を保湿する。この一連の流れは、何世紀にもわたって受け継がれてきた知恵です。
アルガンオイルによるマッサージは、乾燥を防ぎ、肌の表面をなめらかに整える役割を果たしてきました。毛穴を塞がずに肌にうるおいを与えるオイルの性質は、高温乾燥の気候にとくに適しています。
モロッコ美容の本質は「洗い清め、整え、守る」というシンプルな循環にあります。そこに使われる素材は、すべて大地が育んだ天然のもの。この哲学は、ARGANIEがモロッコの天然素材にこだわる理由にもつながっています。
科学が裏づけるアルガンオイルの力
アマジグの人々が経験的に知っていたアルガンオイルの肌への働きは、現代の研究でも注目されています。
筑波大学北アフリカ研究センターの磯田博子教授らの研究グループは2013年、アルガンオイルがメラニン生成に関わる酵素(チロシナーゼ、ドーパクロムタウトメラーゼ)の発現を抑制することを細胞実験で明らかにしました。モロッコで「肌を明るく保つオイル」として使われてきた伝統に、分子レベルの裏づけが加わった形です。
アルガンオイルに豊富なリノール酸は肌のバリア機能を構成するセラミドの原料となり、ビタミンE(トコフェロール)は紫外線などの外的ストレスから肌を保護する抗酸化成分です。
ただし、オイルの品質は鮮度に大きく左右されます。空気に触れた瞬間から酸化が始まるため、ARGANIEでは収穫したその年の実だけを使い、コールドプレスで搾油後、最短48時間で空輸しています。アルガンオイルについてのページでは、その製造工程を詳しくご紹介しています。
よくある質問
Q. アルガンオイルの主な成分は何ですか?
オレイン酸(約45%)、リノール酸(約35%)、ビタミンEを豊富に含む植物性オイルです。
Q. アルガンの木はどこに生えていますか?
モロッコ南西部のスース谷を中心とした約8,280km²の地域に自生し、ユネスコ生物圏保護区に指定されています。
Q. アルガンオイルはどのように使うのがおすすめですか?
洗顔後すぐ、化粧水の前にブースターとしてお使いください。手のひらにたっぷりとオイルをとり、顔全体にやさしくなじませるのが基本です。
Q. 開封後の使用期限はどのくらいですか?
鮮度が重要なオイルのため、開封後は3ヶ月以内のご使用をおすすめします。
まとめ
雨の少ない大地で確実に次の世代を残すために、アルガンの木は実に濃密なオイルを蓄えました。地下8mまで根を伸ばし、ときに葉を落としてまで生き延びるこの木を、アマジグの人々は何世紀にもわたって余すことなく活かしてきました。
植物が自らを守るためにつくり出した成分が、人の肌にもやさしく働きかける。アルガンオイルの物語は、そんな静かなつながりの上に成り立っています。
アルガニエの100%ピュアアルガンオイルで、モロッコの大地が育んだ恵みをぜひ肌で感じてみてください。
参考文献
- Ain-Lhout F., Boutaleb S., Diaz-Barradas M.C., Jauregui J., Zunzunegui M. (2016) "Monitoring the evolution of soil moisture in root zone system of Argania spinosa using electrical resistivity imaging." Agricultural Water Management, 164, 158–166. doi:10.1016/j.agwat.2015.08.007
- Villareal M.O., Kume S., Bourhim T., Bakhtaoui F.Z., Kashiwagi K., Han J., Gadhi C., Isoda H. (2013) "Activation of MITF by Argan Oil Leads to the Inhibition of the Tyrosinase and Dopachrome Tautomerase Expressions in B16 Murine Melanoma Cells." Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine, 2013, 340107. doi:10.1155/2013/340107