OVERVIEW
モロッコには、何世紀にもわたって受け継がれてきたオイル美容の文化があります。アルガンオイルを中心に、ウチワサボテンオイルやオリーブオイルなど、大地の恵みを活かした美容法は、アマーズィーグ(Amazigh)の女性たちの知恵そのものです。本記事では、モロッコの美容オイル文化の全体像と、その背景にある暮らしの哲学をお伝えします。
CONTENTS
モロッコと聞いて、何を思い浮かべるだろうか。サハラ砂漠の乾いた風、マラケシュのスークに漂う香辛料の匂い。そのどれもが正しいけれど、私たちが産地を訪れるたびに強く印象に残るのは、女性たちの手だった。石臼を回し、アルガンの実を割り、オイルを搾る。その手は驚くほど滑らかで、つややかだった。モロッコの美容オイル文化は、そうした日々の営みのなかから生まれたものなのだ。
モロッコの美容オイル文化とは何か
モロッコ美容オイル文化とは、北アフリカの厳しい気候のなかで、植物由来のオイルを暮らしの中心に据えてきた伝統的な美容体系です。
サハラ砂漠に接するモロッコは、強烈な紫外線と乾燥にさらされる土地だ。この環境で肌を守るために、人々は何世紀も前からオイルを使い続けてきた。食用として、薬として、そして美容のために。オイルは特別なものではなく、水と同じくらい当たり前に暮らしに溶け込んでいる。
特筆すべきは、この美容文化が「商品」として生まれたのではないという点だろう。家庭ごとに異なるレシピがあり、母から娘へ、祖母から孫へと手渡されてきた。モロッコという土地が育んだ、実践の知恵そのものである。

アマーズィーグの女性たちが守るアルガンオイル
アルガンオイルとは、モロッコ南西部にのみ自生するアルガンツリーの実から採れる希少な植物油で、2014年にUNESCO無形文化遺産に登録されています。
アルガンオイルの歴史を語るとき、アマーズィーグ(Amazigh)の女性たちを抜きにすることはできない。アマーズィーグとは、北アフリカの先住民族を指す。彼女たちは数百年にわたり、アルガンの実を収穫し、天日で数週間かけて乾燥させ、石を使って一粒ずつ硬い殻を割り、丁寧にオイルを搾ってきた。
1リットルのオイルを得るには、約20時間の手作業が必要とされている。35kgの実を集め、選別し、搾る。その工程に機械はない。あるのは、世代を超えて磨かれてきた手の感覚だけだ。
私たちがこのオイルに惹かれたのも、まさにその製法を目の当たりにしたからだった。コールドプレスで搾られたばかりのオイルは、黄金色というより、少し緑がかった深い琥珀色をしている。肌にのせた瞬間、すっと浸透していく。その速さに、初めて触れたとき言葉を失ったことを覚えている。
成分を見れば、その実力は数字にも表れる。アルガンオイルは約80%が不飽和脂肪酸で構成され、オレイン酸(43〜49%)とリノール酸(29〜37%)を豊富に含む。ビタミンE(トコフェロール)の含有量はオリーブオイルの約2倍にあたる620mg/kgとされている。
アルガンだけではない――モロッコの多彩な美容オイル
モロッコにはアルガンオイルのほかにも、ウチワサボテンオイルやオリーブオイルなど、気候風土に根ざした美容オイルが複数存在します。
モロッコの美容オイル文化を語るとき、アルガンオイルだけに目を向けるのはもったいない。この国にはほかにも、土地が育んだオイルがある。
| オイルの種類 | 主な特徴 | テクスチャー |
|---|---|---|
| アルガンオイル | ビタミンE豊富、不飽和脂肪酸約80% | 軽くなじみやすい |
| ウチワサボテンオイル | 不飽和脂肪酸88%、リノール酸が豊富 | さらりと軽い |
| オリーブオイル | オレイン酸豊富、肌を柔らかく整える | やや重め、しっとり |
ウチワサボテンオイルは、その名の通り、モロッコに自生するウチワサボテンの種子から搾られる。不飽和脂肪酸の含有量は88%にも達するとされ、美容オイルのなかでも際立って高い数値だ。一方、オリーブオイルはモロッコの家庭では料理にもスキンケアにも使われる万能の存在で、ハマム(公衆浴場)で使うサボンノワール(黒石鹸)の原料にもなっている。
こうしたオイルの多様性こそが、モロッコ美容の奥深さではないだろうか。ひとつのオイルに頼るのではなく、季節や肌の状態に応じて使い分ける。その柔軟さは、日本の暮らしにも通じるものがある。

協同組合という仕組みが品質を支えている
アマーズィーグの女性たちが運営する協同組合は、伝統的な製法を守りながら、品質管理と経済的自立を両立させる仕組みです。
1990年代後半、アルガンオイルの需要が世界的に高まるなかで、ひとつの問題が浮上した。品質のばらつきだ。家庭ごとの少量生産では、安定した品質を保つことが難しい。その課題を解決したのが、女性たちによる協同組合の設立だった。
最初の協同組合は1996年に誕生したとされている。現在ではモロッコ国内に約3,000の協同組合があり、約220万人の女性が関わっているといわれる。彼女たちは集まって作業し、知識を共有し、若い世代に技術を伝えている。
私たちARGANIE(アルガニエ)がモロッコの協同組合と直接取引を続けるのは、この仕組みへの信頼があるからだ。顔の見える関係のなかで、その年に収穫された実だけを使い、コールドプレスで搾り、48時間以内に空輸する。鮮度を守るためにそこまでするのは、現地で搾りたてのオイルの力を知っているからにほかならない。
2014年、アルガンオイルにまつわる伝統的な知識と製法は、UNESCOの無形文化遺産に登録された。登録の対象となったのは、オイルの抽出方法、用途、道具の製作技術など多岐にわたる。そしてその「担い手」として認定されたのが、まさにアマーズィーグの女性たちだった。
モロッコのオイル美容を日本の暮らしに取り入れる
モロッコのオイル美容は「洗顔後すぐにオイルをなじませる」という、日本のスキンケアにも取り入れやすいシンプルな考え方が基本です。
モロッコの女性たちは、ハマムで肌を清潔にしたあと、オイルを全身になじませる。このシンプルな習慣は、そのまま日本の朝晩のスキンケアに応用できる。
アルガニエが提案しているのは、洗顔後すぐにアルガンオイルを「ブースター」として使う方法だ。化粧水の前にオイルを3〜4滴なじませることで、そのあとのスキンケアのなじみが変わってくる。モロッコの女性たちが「オイルは肌の土台をつくるもの」として使ってきた知恵と、発想は同じである。
大切なのは、オイルを「特別なもの」にしないことだろう。モロッコの暮らしでは、オイルは日常の一部だ。朝の洗顔後に数滴。夜のお手入れの最初に。それだけで、肌は自ら潤う力を思い出していく。何千年もの歳月が証明した、もっとも素朴で、もっとも確かな美容法。それが、私たちアルガニエが届けたいもののひとつなのだ。
よくある質問
Q. モロッコの美容オイルにはどんな種類がありますか?
A. 代表的なものはアルガンオイル、ウチワサボテンオイル、オリーブオイルの3種類です。アルガンオイルはビタミンEがオリーブオイルの約2倍含まれ、不飽和脂肪酸が約80%を占めます。ウチワサボテンオイルは不飽和脂肪酸が88%と、美容オイルのなかでも特に高い数値です。
Q. アルガンオイルはなぜUNESCO無形文化遺産に登録されたのですか?
A. 2014年、アルガンオイルの伝統的な製法や関連する知識体系がUNESCO無形文化遺産に登録されました。対象となったのは抽出技術、用途、道具の製作技術などで、その担い手はモロッコ南西部に暮らすアマーズィーグの女性たちです。
Q. アルガンオイルを日本のスキンケアに取り入れるにはどうすればよいですか?
A. 洗顔後すぐ、化粧水の前に3〜4滴をブースターとして使うのがおすすめです。オイルが肌の土台を整え、そのあとの化粧水や美容液のなじみを高めてくれます。朝と夜、毎日のルーティンに組み込むことで、モロッコのオイル美容を自然に取り入れられます。
Q. コールドプレス製法とは何ですか?
A. コールドプレス製法とは、熱を加えずに圧力だけでオイルを搾り出す方法です。加熱による成分の変質を防ぎ、ビタミンEや不飽和脂肪酸といった栄養素をそのまま保つことができます。アルガニエのアルガンオイルもこの製法で搾油されています。